政治のお悩み相談所:大学院の物事

政治とコミュニケーションについて研究している博士課程所属のものです。大学はカンザス大学。テクノロジーと政治、政治的分断、ソーシャルメディアによる日常生活と政治の重複などに関心があります。文系・社会科学系大学院生として発信中

『シェアハウス わたしたちが他人と住む理由』

シェアハウス わたしたちが他人と住む理由 -
シェアハウス わたしたちが他人と住む理由 - 「明日から友達と一緒に生活しなさい。」「あなたが会ったことない人が住んでいる家に住むことになったから。」そんなことを家族から言われる。もしくは、身内の人からそう打ち明けられたとしたら。あなたはどう受け止めるだろうか。20〜30代の人はおそらく少しは考えたことがあるのではないだろうか。大学進学を機に上京する人や東京に住みたいけれど大きな家は家賃が高いから、その家賃を割り勘したい人など、理由を考えればいくつか出てくる。いくつか考えられる中で、やはり経済的理由が多いと考えられるだろう。もしくは、自己啓発として自分と目標を共有している人と一緒に住むことでより多くの情報に触れることができるということだ。これら2つの理由はベスト3に入り込む。(p,54 シャアハウスに住もうと思った理由より参照) しかしながら、50%は楽しそう・やってみたいという気持ちからシャアハウスに住んでいるようなのだ。もちろん、全数調査ではないため統計的に問題はあるが何らかの社会状況を示唆していると思われる。それにしても、楽しそう・やってみたいという意見が50%とは驚きだ。なぜなら、どうしても私にとってはなるべく知らない他者の人間とは関わらないように生きているとしか思えないからだ。 これは私たち世代の何を表しているのだろうか?なんでもシャアをする世代なのか。よく言われるのは若い世代は物欲がなくなってきているという説である。『物欲なき世界』 確かに、私の親世代(50代)は車、テレビ、家を購入する人は多いかもしれない。しかし、物欲が失われたわけでなくただお金を使う対象と金額が変化したのではないかと思う。人間の欲求や感情は昔から論じられてきたテーマでもあるからいきなり若者の物欲がなくなりましたというのはあまりにも無茶だ。食欲はある。車やバイク愛好家の若者は車やバイクを欲しがる。パソコンが好きならば買う。アイドルオタクはグッズを購入する。 しかしながら20代から30代の特徴と言われれば、SNSの普及とともにプライベートを公開することにためらいがなくなってきていることは感じられる。それゆえ、SNS公開のために物を消費する行動もちらほらみられる。例えば、表参道や原宿に行き、流行りのパンケーキや面白いマカロンを購入する。一人で行くと変人だから友達を誘っていくことがあげられる。(もちろん友達がいた方が楽しいから呼ぶのであろうけれども)。これは共有消費行動と呼べる現象なのかも。SNSの普及によりいつでも友達にアクセスすることができる。自分が楽しい、面白いと思うことがあったら一人ではやらず、それを共同・共有で行う。そうすることによって一つの物語を作ることができる。その物語はある種の思い出になる。人々はこの思い出作りのために物を消費しているのかもしれない。 少し脱線すると、思い出とお金生み出す方法について面白いものを見つけた。 YouTube動画(https://www.youtube.com/watch?v=VnVLTULDjgE)でキングコング西野氏がどのように絵本を売るのかを説明している。一文で要約すると、人は思い出になるものは多少高くても買ってしまう。旅行へ行った時にお土産を買ってしまうのはその例だという。詳しくは動画で確認をしてほしい。 今までの話を統合すると、20〜30代の人の消費行動は思い出や他者と作り出す物語を消費において重視するようになってきている。その傾向はSNSの普及で加速しているように考えられる。仮説であるが、思い出を蘇らすためにその装置として物を消費することがこれからは必要になるかもしれない。そして、シャアハウスはその思い出作りの装置になりうる。なぜなら、知らない人と一緒に住むことで新しい物語を作ることができる。 まだ知らない人と一緒に住むことに抵抗がある段階であろう。友達と住むことなら自分でもできそうだ。これから寮生活があるので、シャアハウスとはいかないが、それに近い生活が待っている。これから生きていく上で一つの選択肢には間違いなく入れてもいいのではないかと思わせてくれる一冊だ。