政治のお悩み相談所:大学院の物事

政治とコミュニケーションについて研究している博士課程所属のものです。大学はカンザス大学。テクノロジーと政治、政治的分断、ソーシャルメディアによる日常生活と政治の重複などに関心があります。文系・社会科学系大学院生として発信中

 ソーシャルメディア論 つながりを再設計する 藤代裕之編著

こんにちは、今日はどうお過ごしですか。FacebookTwitter の調子はどうですか。うまく付き合ってますか(笑)。 今回はメディアコミュニケーションの勉強も兼ねてソーシャルメディア論という本をご紹介します。 ソーシャルメディア論: つながりを再設計する -
ソーシャルメディア論: つながりを再設計する - 普段からソーシャルメディアを友達の近状確認やニュース確認をするためにしか使っていない私ですが、世の中が知らぬ間に進んでいること、そしてそれに一切気づかないことがたくさん。というわけで、今回の本は、ソーシャルメディアについての本です。本書の目的は2013年から始まった「情報ネットワーク法学会の研究会『ソーシャルメディア社会における情報流通と制度設計』の2年間に討議されてきたことをまとめたものとなっているようです。p14  本書では、ソーシャルメディアと交え、歴史、技術、法律、ニュースメディア、広告、政治、キャンペーン、都市、権利、モノ、教育、人など様々な分野からソーシャルメディアが論じられています。その中でもソーシャルメディアがメディアとしてどのように機能するのかという問いに興味があったのでここでは2つ関連した章をご紹介します。
第4章 ニュースメディアー『ネットニュース』は公共性を保てるか 伊藤儀雄
Yahoo! ニュースはポータルサイトの中でも一目をひくし、1日一回は確認します。Yahoo!ニュースの元ネタは他のメディア(新聞、テレビ局など)から一日約4000本送られてくるようでその中で独自に記事を選択しているのだそう。p77 スマートフォンなどで流行りのニュースキューレーションアプリ「SmartNews」などはもはや当たり前の時代になっている。 ではこれまでのニュース配信とどのように変化が起きたのか?それは事象の発見がソーシャルメディアを通して行われるようになっているということ。これまで記者が事象の発見を行い、裏どりをしそれをコンテンツ化して流布していく形だったが、もはや事象はTwitterなどから集めることができるため記者はそれを記事にすればよい。しかしながら、裏どりをしないとTwitterの情報が本当に正しかったのかわからずニュースサイトとして信憑性にかけることが問題である。デマが広がるケースが多々あるのがソーシャルメディアの問題点であるがゆえに、インターネットの情報の信頼度31.5%という数字になっている。p13 
第11章 メディア ー都市と地方をつなぎ直す 藤代裕之
私は、ソーシャルメディアは人とのつながりを促進させることはできていると思っているが、人間関係自体は希薄になっていると思う。やはり対面で話す機会が減ったことで接触効果が薄れて人を好きになるという感情そのものが薄れていること。最近のテレビで恋愛をしたがらない若者が増えている(本当にそうなのかは数字が出ていないのでわからない)というところからなんとなく感じる。 しかしながら本章ではソーシャルメディアはコミュニティを形成する力があること、そして「オープンジャーナリズム」という新たな社会的活動を促進することができる可能性を秘めていることに注目している。 すでにTwitterなどで一次情報を獲得したユーザーがそれをツイートし記者がそれを検証していくことがなされている。これがオープンジャーナリズムである。ソーシャルメディアユーザーが主体となって調査を行い、記者がそれらを検証していく。これが今後期待されるソーシャルメディアの新形態。 著者は次にように言います。「これまでのマスメディアに関する常識は、情報そのものに価値がある、との考えだった。したがって、誰よりも早く知らせることをスクープと考え、そのためにしのぎを削ってきた。情報そのものに価値があるため、公開した瞬間の価値が最大で、多くの人が知るようになると価値が下がる。これは情報が次から次えと消費されてしまう原因でもある。ところが、ソーシャルメディア時代に生まれたのは、拡散によって情報の価値が向上していくという逆転現象だった。」p185
まとめ
これから既存のマスメディアはスクープ情報を探し続けるでしょう、しかし、情報が消費され続けているだけでは物事は何も解決されません。一人が行動を起こしても変わりません。しかし、コミュニティならばそれは大きな力になり社会を変えていく力になります。ソーシャルメディアははそのような力を持っていることを知れた本でした。