政治のお悩み相談所:大学院の物事

政治とコミュニケーションについて研究している博士課程所属のものです。大学はカンザス大学。テクノロジーと政治、政治的分断、ソーシャルメディアによる日常生活と政治の重複などに関心があります。文系・社会科学系大学院生として発信中

外国語学習の科学 -第二言語習得論とは何か- 白井恭弘著

本日はこの本です。 外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書) -
外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か (岩波新書) - 英語は、好き嫌いがはっきりと分かれる科目の一つですね。英語好きな私にとって英語を学校で学ぶことは嫌いでしたが英検などの日常英語の習得には興味がありました。これから日本経済が縮小するにあたり海外とのやりとりは不可欠になってくるでしょう。英語学習を始めている人やこれから始める人はおそらくどのように勉強をしていくか考えて、英語学習本に手を出すと思います。そこで知っておいて欲しいことが一つあります!!世の中にある英語学習本のほとんどは筆者の経験談を基に書かれているため、学習者個人の特性や適性などを無視した形となっています。今回読んだ本は外国語を学習する際に知っておいた方が良いこと満載!研究者が発表した論文などを基に普遍性を目指しているためそこらの学習本を読むより有益です。
国語学習を始める年齢は関係あるのか?
外国語を学習するのは出来るだけ早い方がいいと聞いたことありますが実際それって本当なのかわかりません。確かに年齢によって外国語学習が成功する確率は高くなるけれど外国語学習が失敗する年齢はまだわかっていないようです。白井氏は「年齢が習得の成否に非常に大きな影響をあたえる、という事実は、第二言語習得研究で定説になっています。つまり学習を始める年齢によって、学習が成功する確率が大きく変わってくるということです。」p31と主張しています。 しかし 白井氏はこの臨界期説に注意が必要と主張しています。「ただしここで注意しておかなければならないのは、学習年齢が成否に強に強い影響をあたえる、ということについては研究者の間で意見が一致していますが、臨界期というものが実際にあるのか、またあるとすればそれが何歳くらいなのか、ということについては、まだ合意がないということです。」p32 言語領域でいくつか臨界期が見られた研究もあるみたいです。その中でよく言われている発音に関しては6歳までが臨界期だという研究があるみたいです。p33
国語学習に適性はあるのか?
国語学習に向いている人向いていない人がいるような気はしますがもし、自分に適性がないと分かれば少し残酷で勉強なんてやる気になんないですよね。 研究が進んでいるアメリカでは、実際に適性を見るテスト(MLAT= Modern Language Aptitude)が開発され税金をかけて才能がある人を選別し教育することが行われているようです。p54 MLATテストが図る能力として4つあります。 1、 音に対する敏感さ 2、 文法に関する敏感さ 3、 意味と言語形式との関連パターンを見つけだす能力 4、 丸暗記する能力                 抜粋p54 これら4つの能力を測ることで外国語学習の適性が図られるということですね。英語が上手に発音することができる人はモノマネが上手かったりすることがありますがモノマネの能力って1と4には当てはまりますね。 同じ音を作り出して同じことをいう作業は外国語学習につながっているのかもしれません。
知性と外国語学習適性は比例するのか?
中学校や高校で英語の点数だけが伸びなかったりする人がいると思いますが、外国語を学習する能力と他科目の能力は違うのでしょうか。白井氏によると外国語学習の適性とIQテストとでは独立した適性があることがわかっているようです。 この結果を支持するように、バイリンガル研究から持ち出される日常の会話力である「日常言語能力」と学校で学習する知識などを活用しながら読んだりする言語能力である「認知学習言語能力」の概念を用いた研究結果によると、知能テストと比例するのは認知学習言語能力だそうです。p56  そのこと踏まえると、学校英語はできないが英検などの日常で使われる英語を問われるものだったら高い点数を取ることができるかもしれないということが言えるでしょう。実際、私が指導している中学2年生の一人に学校のテストはあまりできないが英検は合格することができるということが起こっています。
インプットとアウトプット
インプットとアウトプットが外国語習得に必要不可欠なのは誰もが知っているでしょう。ところが、アウトプットはどこからくるのかを尋ねると意外と言葉に詰まるかもしれません。簡単です!インプとの量からくるのです。インプットがないとアウトプットはできません。最近はインプットとアウトプットを同時に行うコミュニカティブアプローチという教授方が主流です。授業中に多少のインプットを与え、それを使ってアウトプットをするという方法。これは生徒にとっては楽しいかもしれませんが、インプットが少ない状態段階で行っても難しいためやはり高等教育で行うのが良いと思います。 白井氏はインプットの量が少ないことや中学校からいきなり認知学習言語能力を使うものよりも意味重視の日常言語能力を小学校から導入して段階的に認知学習の方にあげていくことを勧めています。p154
まとめ
英語学習に関する本はこれまでたくさん見てきたがどれも自分にあっていないことが多いため三日坊主になりがちだったが、この本を通してこれからの言語習得の大まかな道筋を立てられそう。やはり何よりも、インプットをたくさん行ってそれを少しずつアウトプットすることが大切。どんな方法でも最終的に沢山のことを覚えてそれを実生活に生かすことができれば成功なのだ!