政治のお悩み相談所:大学院の物事

政治とコミュニケーションについて研究している博士課程所属のものです。大学はカンザス大学。テクノロジーと政治、政治的分断、ソーシャルメディアによる日常生活と政治の重複などに関心があります。文系・社会科学系大学院生として発信中

ロボットは東大に入れるか 新井紀子

こんにちは、今回はロボットが東大に入れるかというなんとも近未来的な題でありますが、これは数年後には実現が可能になってくるのではないかということをまず知っておいた方が良いでしょう。2016年11月25日付の朝日新聞朝刊の中で東ロボくんが、関東・関西の難関私立大学の合格率が80%に達したと報じた。東大合格へはまだ道のりはあるようだが課題を克服することで到達は可能になるかもしれない。この事実に衝撃を受けて、このプロジェクトリーダーの新井紀子さんが書いた本を手にとってみた。 ロボットは東大に入れるか (よりみちパン! セ) (よりみちパン!セ) -
ロボットは東大に入れるか (よりみちパン! セ) (よりみちパン!セ) - そもそもロボットが東大へ入れるかプロジェクトを立ち上げることになったのは同僚のロボット研究者に著者が思いついたことを質問したことから始まるそうです。 「この研究テーマを思いついたのは、2010年の12月のことでした。その日私は考えごとをしながら職場のエレベーターを待っていました。やがてドアが開き、同僚のロボット研究者が降りてきました。その瞬間、私は彼の肩をつかんで問いかけていたんです。『ねぇ、ロボットは東大に合格するのかしら』と。」 そこから他に2人の研究者とプロジェクトを始めるようになったようです。 本書を読んでみて思ったことは、意外に私はAIについてわかっていないということです。私はApple ユーザーで、たまにSiriを使いますが、どのように機能しているのか考えたこともありませんでした。ただただ頭がいいなーーっということだけ。そこで今回は私が驚いたことを紹介していきます。
「AIは人間と同じように言葉を受け取ることができる」という間違い!
Siriを使って話をしていると話しかけた言葉をうまく理解して的確に返答しているように思います。しかしながら実際はそのように見えているだけで中身は「イメージを数学の言葉」にしているだけなのだと言いますp28 つまり、あるパターンに対してはあるパターンの返答をするように数式が組み込まれているイメージですね。著者は人工知能ができるかどうかは「人間の頭脳は数学でかけるか、ということ」と簡潔にまとめています。p29 AIは数式が埋め込まれていてその式を計算することで的確な答えを導き出すことができます。ということは様々なものを数式化する必要が出てきます。そこで本書で、計算することができるとはどのようなことか数学者・論理学者のアラン・チューリングの理論を用いて説明をしています。たったの3つ整うとそれは計算することができるというのです。それらは「有限の知識・特定の条件の下における特定の手続き・同様に繰り返す」です。例としては掛け算九九があります。このようにAIに計算させることができればより正確な答えが出てくるわけです。そして最後に、あまりに膨大な計算になった時に対応できるように確率・統計を備えることができるわけです。
AIに入試問題を暗記させれば必ず解けるというのは間違い!
入試問題を解くために数式を作っていけばよいということがわかったのですが、世の中にはまだ数式で表すことが難しいものがあるようです。本書で紹介されている例は、犬と猫を写真から判断するというものです。人間はだいたい見分けることができますが、それを数式化するのは難しいようです。なぜか、犬・猫を正確に分けるものがないということです。目の大きさや口の形などではほとんど見分けがつきません。数式では具体性が求められるということですね。そこで先ほどの統計が使われるということです、できるだけ多くのサンプルを覚えてい事で統計的に犬か猫を分けていくという事です。
まとめ
東ロボくんが難関私立大学を合格80%という衝撃的な数字から人工知能に興味を持った。よくよく考えてみると、人間のコミュニケーションってそもそも何という問いにぶつかった。コミュニケーションを専攻する者にとってはまず、「コミュニケーションてなに」ということを科学的(普遍的)に研究して行くことでロボットに応用が利いてくるように思える。本書は人工知能の最先端の研究プロジェクトの一つであり、本当に読んでいてワクワクする。ぜひ文理系問わず読んでみてほしい。